「戦後五十年の生き証人」が語る12
【田原】平成6年5月、四月会という団体ができました。宗教団体の代表や文化人の集まりで、「自らの観念、信仰に固執して他を排除しようとする勢力や、それと同調するものに対して厳しく一線を画する」といっています。この四月会をどう思われますか。
【池田】なんとも思いません。目的がよくわからないから。したがって、何も発言していません。まあ、向こうが一線を画しても、こちらは画してはいない。われわれは、日本が平和になり、日本人全体が幸せになれば、それでいいんですから。
【田原】こんな会ができた理由はなんだと思いますか。
【池田】こちらが聞きたいくらいです。心が小さいのでしょうね。焼き餅というか、「自分たちの勢力を維持したい」「新しい勢力の勃興をなんとか抑えたい」という利害からではないですか。
【田原】四月会の人たちは、憲法20条(「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」)を問題にしています。「公明党は、立法権という権力を行使している。これは憲法違反だ」というわけです。
【池田】それは理屈のための理屈です。すでに内閣法制局長官の見解で明快に否定されたのではないでしょうか。また、他の優秀な憲法学者や世界的な学者がそういうことを論じていますか。選挙の自由、支援の自由、立候補の自由、結社の自由があるわけでしょう。だから、四月会のいっていることは、まったくの的外れ、浅ましい限りだと、一級の学者はいっています。だから、そんな会恐れもしないし、私が反論するつもりも毛頭ありません。
【田原】四月会をはじめ、創価学会や公明党を批判する人たちは、「政教分離といいながら、実は政教分離していない。本当は池田大作の意向どおりに公明党は動いている。いわば、公明党は池田大作の操り人形だ」と思っている人が多い。この点はいかがですか。
【池田】思うことは自由です。しかし、これだけの大勢の人々を自由に操れる人間なんて世界にいませんよ。落語みたいな話です。また、支援者が支持政党に意見をいれたからといって、それが憲法違反になるのか、それが政教一致になるのか。そんなばかばかしい話はどこにもない。まったく社会通念に反する。
【田原】平成6年5月24日、羽田政権の時代ですが、衆議院の予算委員会で、亀井静香さんが、こんな質問をしています。93年夏の細川内閣の発足時、池田さんは軽井沢で開かれた創価学会本部幹部会で、「公明党から大臣が出ようとしている。大臣は皆さんの部下です」と発言された。「これは公明党が創価学会に支配されている証拠だ」と。
【池田】いい話じゃないですか。議員や大臣は公僕でしょう。主権在民だから、大臣より国民のほうが偉いのは当然だ。田原さんは、大臣のほうが上で国民が部下だと思われますが、大臣だって自分の選挙区にいけば、選挙民に最敬礼しているではありませんか(笑)。
【田原】池田さんは「公明党閣僚は創価学会の幹部の子分だ」という意味で、そういったわけですか。
【池田】とんでもない! 権力者のいいなりになっては絶対にいけないという意味だ。ともかく議員や大臣を先生よばわりして偉くさせすぎてはいけないと思う。いつも選ばれた人に威張られて、選んだ人がばかにされてはかわいそうだ。私は一生涯、庶民の味方として戦っているのです。