「戦後五十年の生き証人」が語る8
【田原】昭和45年に、藤原弘達さんの『創価学会を斬る』という本をめぐり、いわゆる言論問題が起こりました。池田さんは、これをどう捉えていますか。
【池田】先哲いわく、「同じ石に二度躓くは、愚かなり」と。だから、二度と躓かずにきたつもりです。
【田原】つまり、あれは失敗だったと。
【池田】大失敗です。ただ、われわれが命をかけて信奉するものを侮辱された、熱心に真面目にやっている庶民が愚弄された、そういう仕打ちにあえば、怒りたくなるのは当然でしょう。
仏法には、「彼が為に悪を除くは即ち是れ彼に親なり」という言葉があります。「非常によくない行為には、偽り親しんではならない。そして、言うべきことは厳然と言え」という意味です。その意味においては、教義を守るためにも、真剣すぎた。もちろん、言論や表現の自由はありますし、それなりに尊重しなければならない。つまり、学会も当時はあまりにも若かった、ということでしょう。
【田原】池田さん自身が、「この本を売らせてはいけない」と言ったのですか。
【池田】ともかく責任は私にあります。
【田原】その年、池田さんは言論問題に対して謝罪し、「政教分離を徹底させる」「国立戒壇という言葉は一切使わない」と宣言されましたね。その当時、公明党の候補者は、選挙前にいわゆる出陣式を創価学会本部のご本尊の前でやっていたそうですが。
【池田】やっていました。ほかの党の議員だって、神社で出陣式をやったり、いまでもやっているじゃないですか。われわれが、仏前で選挙の出陣式をやるのも、別に不自然ではない。
【田原】それもやめた。なぜですか。
【池田】それぞれ自分の家に、ご本尊がありますから。その仏前で決意を込めて出陣すれば、いちばん早道だから、そうさせていっただけです。
【田原】つまり、ご本尊の前での出陣式自体は、別に悪いことではないと。
【池田】正しいことだと思います。
【田原】ただ世間がうるさいからやめようというわけですか。
【池田】そうです。無理する必要はないということです。仏法は道理ですから。