太田昭宏「真っ向勝負」16
ライフストーリー3「政治」
「民衆のための政治を」
太田昭宏は、民衆の中から生まれ、民衆に育てられた政治家である。戦争に苦しめられた母から平和の尊さを学んだ。長男を亡くしてすぐに夫が出征した日の悲しみはいつまでも消えなかったという。太田は、思想的な戦前への回帰を断じて許すことはできない。
また太田には、幼くして命を落とし、あいまみえたこともない、血を分けた四人の兄弟がいる。人の二倍、三倍努力してきた太田は、まさに亡くなった兄弟の分まで力の限り生きてきた。そして行商のリヤカーを引いて働いた父の背中は、中小企業をはじめ、庶民の暮らしを守る太田の原点になっている。
すべての母の幸福のため。平和のため。生命のため。民衆のため、どれも人間主義の政治を実現しようとする太田にとってのキーワードであり、行動の起点となっている。
太田は現在、夫人と二男一女の五人家族。父の鏡平は、すでに昭和五十四年に他界したが、母の春子は九十一歳(平成十五年)の今も、郷里・豊橋で健在である。太田が夏みかん並木をつくった、あの青陵街道のそばで暮らしている。きっと並木道に黄色い夏みかんが実るたびに、息子を思い出し、幸せな笑顔を浮かべているにちがいない。
以上