太田昭宏「真っ向勝負」8
ライフストーリー3「政治」
「共産党に堂々の論戦」
ある日一公明新聞の編集局に、一本の電話がかかってきた。受話器の向こう側の人物は、丁寧な口調でNHKの報道関係者であることを名乗った。「実は公明新聞に載っていたジャンケンポン論を番組で使わせてもらいたいのですが……」。NHK解説委員からの申し入れだった。解説委員の目にとまった記事は太田が執筆したもので、日本の政治状況を分かりやすくジャンケンにたとえた内容だった。
日本の政治はそれまで、なれ合い的な五五年体制がもたらす、勝負の決まったジャンケンだった。つまり自民党がパーを出せぱ、石のように固い野党はグーを出し、形の上ではジャンケンという論戦をしているようだが、一方的な自民ぺ-スであり、政治はまったく動いていなかった。
その閉そく感を破るためには、チョキを出す政党が必要であり、中道の公明党がこの役割を担った。チョキを出す公明党が現れたことで、政治は回転を始めた。チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝ち、グーはチョキに勝つ。この競争原理が働くことで政治が活性化するのである。このように、中道政党の公明党の立場を太田は記事のなかで説明したのである。
太田は造語、キャッチフレーズづくりの名人で、若いころから難解な間題をやさしく印象的な言葉で表現してきた。学生時代から人一倍の読書を重ねてきた太田の資質が、記者となった今、開花しようとしていた。