SOKA薬王のBlog

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ある指導者の愛10

 第一、どこに行っても何千人もの仲間にもみくちゃにされるそのひとが、いちいちくわしいメモを残すなんて、たとえそばに記録係が百人いても不可能なのだ。そこで、ある幹部がとうとうたまりかねて、なるべくビックリ・ショー的にならないように、単刀直入にそのひとにたずねてみたことがある。


「先生はなぜ、そんなにおおぜいの人のことをよくおぼえているんですか。先生は、まるで違った頭脳を持っているとしか思えませんが」と。するとそのひとは、笑して、しばらく考えてからこう答えたという。


「そうじゃないな。わたしは特別、人より記憶力がいいなんて思ったことはない。子供のころもあんまり記憶のいいほうじゃなかった。いまだって、偉い学者からむずかしいことを聞いて、全部忘れてしまうときもある。


 ただ、わたしが、一度会ったうちの人たちのことを、よくおぼえているとすれば、それは――わたしが本気だからだ。わたしは、うちの人たちと握手したり話を聞いたりするたび、ああ、幸せになってほしいな、とギリギリの気持ちで思う。会うのはほんの一瞬でも、その瞬間、わたしはその人たちの苦しみや悩みを何とか分けあいたいと必死に思う。


 わたしは平凡な人間だから、なかなかそれはうまくいかないが、そう努力することによって、うちの人たちを胸のなかに強くきざみつけることはできる。わたしがうちの人たちのことを忘れないのは、きっとそのせいだろうな」