「人間主義の内実を問う」より1
二十一世紀を目前にして、人間の「内発性」をどのように喚起していくか。これこそ、最も重要な課題である。
限りなき精神闘争が不可欠
その「内発性」をどう喚起していくかについて、名誉会長は「御書は、正反対のことを仰せになっているから人間的、人間主義なのだ」といわれたことがある。
社会には、矛盾が多い。例えば、中国の故事にも「虎穴に入らずんば虎児を得ず」とある反面、「君子、危うきに近寄らず」ともいう。しかも、いずれも真実を言い当てている。
御書にも、“一遍の題目で成仏する”と説かれているかと思えば、“たった一つの謗法でも地獄に堕ちる”との仰せもある。こうした例は他にも多い。
名誉会長は、このことに触れ、「何事にも両面があり、一方に偏らないからこそ、人間的なのです。つまり、人間が生きるということは、相反する課題を抱え、その緊張感のなかで、バランスを取りながら、自分を磨き、前へ、前へと、進んでいくということなのです」(『新・人間革命』青葉10)と綴っている。
物事を選択する際には、両極端なさまざまな選択肢がある。そのなかで、我々自身が選びとるところに、人間の苦労・苦悩がある。複雑な問題であればあるほど、苦悩は深まる。その作業を通して、内発的な精神性が育まれるのである。
1997-04-16 男子部の連続講座「21世紀と宗教」から